「モーパッサンの鏡に映るもの」
- Yoriko Sakasegawa
- 2月28日
- 読了時間: 1分
人は、追い詰められたときにこそ、
その人の「善良さ」の輪郭が浮かび上がるのかもしれない。
モーパッサン『脂肪の塊』を読み返すと、
私はいつも、胸の奥にひやりとした風が通り抜ける。
笑ってしまうほど滑稽で、
どこかで見覚えのある影が、静かにこちらを見ている。
最初は善良に見えた人々が、
状況のわずかな揺らぎで、別の顔を見せ始める。
その変化は劇的ではなく、むしろ日常の延長にある。
だからこそ、痛い。
そして、どこか愛おしい。
モーパッサンは断罪しない。
ただ、鏡を置くだけだ。
その鏡に映るものを、どう受け取るかは私たちに委ねられている。
『脂肪の塊』は今日も私に問いかける。
あなたの善良さは、どこまで本物ですか。
状況が変わっても、その選択を続けられますか。
その問いの前に立つとき、
私は自分の影の輪郭を、そっと指でなぞっている。



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