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飾られている彼女(雅歌1:10)

8月29日
読了時間: 3分

「飾り輪のあるあなたの頬は美しい。


 宝石の首飾りがかけられたあなたの首も。」


      (新改訳2017)



נָאוּ לְחָיַיִךְ בַּתֹּרִים

(ナーウー・レハヤーイフ・バットーリーム)



צַוָּארֵךְ בַּחֲרוּזִים

(ツァッヴァーレーフ・バハルーズィーム)



ここはゆっくり観察すると面白い。


נָאוּ 

 (ナーウー)

 「美しい/麗しい」


לְחָיַיִךְ  

 (レハヤーイフ)

 「あなたの頬」


בַּתֹּרִים  

 (バットーリーム)

 「飾り輪で/飾りの列で」


そして、


צַוָּארֵךְ  

 (ツァッヴァーレーフ)

 「あなたの首」


בַּחֲרוּזִים  

 (バハルーズィーム)

 「首飾り(ビーズ・珠の連なり)で」


面白いのは、まず動詞がほとんど動かないこと。


7節では、「教えてください」「どこで羊を飼うの?」


8節では、「出て行きなさい」「足跡を追いなさい」「子やぎを飼いなさい」


かなり動いていた。


9節で突然、「私はあなたを……雌馬になぞらえた」


そして10節。


表に現れている動詞は、「נָאוּナーウー」ひとつ。


日本語だと「美しい」で、


形容詞のように聞こえるけれど、


ヘブル語では動詞。


「美しい」と、その状態を述べている。


つまり10節は、


動詞の数が、ひとつに減っただけじゃない。


残ったその一つも、


「教えて」「出て行け」のような動作を命じることばではなく、


「美しい」と、その状態を述べている動詞。


あとは、――頬。飾り輪。首。首飾り。


動きが止まって、


視線だけが、残る。


カメラが急に彼女へ寄ったみたい。


しかも9節では彼女全体を「雌馬」にたとえたのに、


10節では身体の部分を一つずつ見る。


9節 あなたを――雌馬に。


10節 あなたの頬――飾り輪で。   


   あなたの首――首飾りで。


見ているのは、誰だろう。


10節で「頬が美しい、首が美しい」と言っているのは、


9節から続く、


「わが愛する女よ」


と呼びかけた、あの声。


7節では、彼女のほうが、


「教えてください、あなたはどこ」


と呼びかけていた。


そして9節から、今度は彼女に向かって、声が聞こえている。


彼女を「わが愛する女よ」と呼び、雌馬にたとえ、


10節では、その頬と首へと視線が近づいていく。


そして、ちょっと気になるのが、


「飾られている彼女」


5節では、「私は黒いけれども美しい」


6節では、「私を見ないで」と言っていた女性。


ところが8節では、「女の中で最も美しい人よ」


と呼ばれ、


9節では、「わが愛する女よ」


そして10節では、頬が美しい。首が美しい。


と、彼女の姿が、少しずつ具体的に見られていく。


5節 私は美しい


6節 私を見ないで


8節 あなたは美しい


9節 わが愛する者よ


10節 あなたの頬は美しい


……あれ?


彼女は「私を見ないで」と言ったのに、


本文はだんだん彼女を見ている。



7節 彼女から声が出る

↓

9節 彼女へ声が向かう

↓

10節 頬、首へ視線が寄る



ここで、少し立ち止まる。


6節で彼女が「見ないで」と言った相手は、


自分の日焼けを見る、エルサレムの娘たちだった。


ところが10節で彼女を見ているのは、


「わが愛する女よ」と呼ぶ、あの声。



同じように彼女へ向けられた視線なのに、


6節では、「私を見ないで」と彼女は言った。


ところが10節では、彼女の頬と首が、


「美しい」と語られている。


……誰が見るかで、


見られることは、こんなにも違うのかなぁ。



でも、ここから先は、言いすぎになる。


本文は、


「誰が見るかで、見られることが変わる」


とは書いていないから。


書いてあるのは、


「見ないで」と言った彼女が、


10節で、頬と首を美しいと見られている――


その並びだけ。


だから、ここに、鉛筆で丸をつける。


「私を見ないで」と言った彼女の頬と首を、


声の主が、見ている。


この景色のところで、立ち止まる。


暖かな光の中、木のテーブルの上に大きく開かれた聖書。
「私を見ないで」と言った彼女の頬と首を、声の主が、見ている。

 
 
 

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