女の中で最も美しい人よ(雅歌1:8)
「女の中で最も美しい人よ。
あなたが知らないのなら、
羊の群れの足跡を追って出て行き、
羊飼いたちの住まいの傍らで、
あなたの子やぎを飼いなさい。」(新改訳2017)
7節では彼女が、
「私に教えてください。」
「どこで羊を飼っているの?」
と尋ねる。
8節。今度は返事が返ってくる。
ヘブル語本文
אִם־לֹא תֵדְעִי לָךְ
(イム・ロー・テーディー・ラーフ)
「もしあなたが知らないのなら、」
הַיָּפָה בַּנָּשִׁים
(ハッヤーファー・バンナーシーム)
「女の中で最も美しい人よ。」
צְאִי־לָךְ בְּעִקְבֵי הַצֹּאן
(ツェイー・ラーフ・ベイクヴェー・ハッツォーン)
「群れの足跡について出て行きなさい。」
וּרְעִי אֶת־גְּדִיֹּתַיִךְ
(ウルイー・エト・ゲディヨータイフ)
「あなたの子やぎたちを飼いなさい。」
עַל מִשְׁכְּנוֹת הָרֹעִים
(アル・ミシュケノート・ハーロイーム)
「羊飼いたちの住まいのそばで。」
声が変わった。
7節:הַגִּידָה לִּי
「私に教えてください」
8節:אִם־לֹא תֵדְעִי
「もしあなたが知らないのなら」
質問に対して返事が来ている。
しかも、תֵדְעִי は女性単数への二人称。
さらに、
הַיָּפָה בַּנָּשִׁים
(ハッヤーファー・バンナーシーム)
「女の中で最も美しい人よ。」
と女性に呼びかけている。
少なくとも、7節まで語っていた女性とは別の声が、
8節で彼女に向かって語っていることが見えて来る。
ただ・・・
誰が答えてるの?
8節には名前がない。
男性なのか。
複数の人々なのか。
誰の声なのか。
本文は語っている者の名前を語らない。
まただ(笑い)。
そして、かなり面白い事が起きる。
7節で彼女は、
「あなたはどこで羊を飼うの?」
と尋ねた8節の返事。
צְאִי־לָךְ
(ツェイー・ラーフ)
「出て来なさい」
בְּעִקְבֵי הַצֹּאן
(ベイクヴェー・ハッツォーン)
「羊の群れの足跡について」
そして、
וּרְעִי אֶת־גְּדִיֹּתַיִךְ
(ウルイー・エト・ゲディヨータイフ)
「あなたの子やぎたちを飼いなさい。」
7節では、
「あなたは、どこで羊を飼ってるの?」だった。
8節では、
「あなたも子やぎを飼い(放牧)に行きなさい。」
彼を探していた女性が、今度は自分の子やぎを連れて、
野へ出て行くよう促される。
「どこ?」と尋ねたら、
場所ではなく、
「出て行きなさい」が返って来た。
つまり、探していた彼は見つからないまま、私のほうが歩けと言われた。
・・・・え?
7節で、
王だと思ったら、羊を飼っている。
8節まで来ると、
返ってきたのは、彼のありかではなく、
彼女自身を送り出す声だった。
彼女の手には、
גְּדִיֹּתַיִךְ
(ゲディヨータイフ)
「あなたの子やぎたち」
さらに、先には「羊飼いたち」。
最後は、
מִשְׁכְּנוֹת הָרֹעִים
(ミシュケノート・ハーロイーム)
「羊飼いたちの住まい/天幕」
הָרֹעִים
は、羊飼いの複数
7節では、
あなたはどこで飼うの?
と、一人の「あなた」を探していた・
ところが8節になると、
羊の群れ
あなたの子やぎたち
羊飼いたち
・・・羊の世界が一気に広がる。
そして、5節を思い出す。
「ケダルの天幕のように」
כְּאָהֳלֵי קֵדָר
(ケオホレー・ケーダール)
כְּ־
(ケ) =~のように
אָהֳלֵי
(オホレー)=~の天幕(複数・連語形)
קֵדָר
(ケーダール)=ケダル
8節では、
「羊飼いたちの住まい/幕屋」
מִשְׁכְּנוֹת הָרֹעִים
(ミシュケノート・ハーロイーム)
6節では、彼女はぶどう畑を守る者。
7~8節、今度は羊・子やぎ・羊飼いの景色。
彼女の周囲がどんどん野外の世界になっていく。
彼を探していたら、
「あなたの子やぎたちを飼いなさい」と言われた。
彼女は「あなたはどこ?」
と聞いて、
返って来たのは、
「群れの足跡について行きなさい。」
「あなたの子やぎたちを飼いなさい。」
ここだよ、と、居場所を教えてくれない。
足跡をたどれ。
これは面白い。
彼女が「どこ?」と尋ねたら、「足跡についていけ」と返って来た。
迷子になりそうな雅歌の森に、辿る道をみつけたような・・・。
7節では、私は野に立っているように見えた。
8節では、別の声に、もっと奥へと送り出される。
降りた私が、こんどは歩かされる。
そして、忘れてはいけない今日のタイトル
「女の中で最も美しい人よ」
6節で彼女は、
「私を見ないで」
と言っていた。
ところが8節では、別の声から、
「女の中で最も美しい人よ」と、呼ばれる。
「私を見ないで」と言った女性が、
「女たちの中で最も美しい人」と呼ばれた。事実。
雅歌は、「最も美しい人よ」と近くで招きながら、
「出て行きなさい」と送り出す(促す)書なのかもしれない・・・。





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